光学パッケージング:TO 缶、ボックス、レンズ、アイソレーター
レーザーダイは、長さ数百マイクロメートルほどの半導体の小片です。光ファイバーのコアは直径 9 µm しかありません。一方から他方へ光を導き、それを20年間維持し、反射が戻ってくるのを防ぐことが、光パッケージングの仕事です。TOSA や ROSA を構成する金属缶、レンズ、アイソレーター、レセプタクルがこれにあたります。パッケージングは、モジュールのコストの大部分、伝送距離のかなりの部分、そして長期信頼性のほぼすべてを左右します。
パッケージ形式
| パッケージ | 概要 | 用途 | コストと性能 |
|---|---|---|---|
| TO-can(TO-46、TO-56 とその派生) | サブマウント上にダイを載せた気密金属ヘッダーを、ガラス窓またはボールレンズ付きのキャップで封止したもの | 25G までのほぼすべての SFP/SFP+ 光学部品、PON、1G | 気密パッケージの中で最も安価。帯域幅は約 10 GHz クラスで、25–28 Gb/s 付近が上限 |
| ボックス/ミニフラット TOSA | RF フィードスルーを備え、TEC、サーミスタ、アイソレーター、レンズを収める余地があるセラミックまたは金属製ボックス | 冷却型 DFB/EML:DWDM SFP+、10G ER/ZR、100G LR4 のレーン、400G FR4/LR4 | より高価。PAM4 向けには 50 GHz クラスのフィードスルー |
| バタフライ(14ピン) | TEC と光ファイバーピグテールを備えた、通信業界の伝統的なレーザーパッケージ | レガシーな XFP/300ピン DWDM、高出力ポンプ、ITLA レーザー | 大型で高コスト。プラガブルモジュールではボックス型 TOSA に置き換えられた |
| チップオンボード(COB) | レンズアレイの下、PCB 上に裸ダイを実装。気密パッケージなし | AOC、SR4/SR8、多くの DR4/FR4 | 量産時のコストが最も低い。保護はモールドやコーティングに依存する(チップオンボードを参照) |
| シリコンフォトニクスアセンブリ | 変調器、導波路、検出器を備えたフォトニックチップ。レーザーは接着またはフリップチップ実装され、光ファイバーアレイは端面またはグレーティングを介して結合される | 100G DR/FR、400G DR4、コヒーレント | 多チャネルを1回のアライメントで済ませられる(レーザー:SiPhを参照) |
TO-can TOSA の内部構造
┌── ボールレンズ付きキャップ ──┐
│ ○ レンズ │ → 光はレセプタクル/光ファイバースタブへ
│ ▄ AlN サブマウント上の │
│ レーザーダイ │ ◄── レーザー背面のモニターフォトダイオード(背面光)
│ ▪ サーミスタ(任意) │
├─── ヘッダー(TO-46)─────┤
│ ピン:レーザー +/−、MPD、│
│ サーミスタ、GND │
└────────────────────────┘
- サブマウント。 AlN または Si 製で、熱を拡散し、ワイヤーボンディングされたダイを支えます。
- モニターフォトダイオード(MPD)。 背面端面からの発光(出力の一定割合)を検出し、APC ループに供給します。DDM の Tx パワーはこれをもとに算出されるため、推定値となります(精度と限界を参照)。
- レンズ。 キャップ内のボールレンズ、または別体の非球面レンズが、発散するビーム(レーザー出力は 20–40° で発散)を光ファイバー端面に集光します。結合効率は通常 30–70 %、つまりダイと光ファイバーの間で 1.5–5 dB の損失が生じます。
- 気密封止。 キャップの抵抗溶接とガラス・金属ピンシールが、端面への湿気の侵入を防ぎます。製造時にはヘリウムでリークテストが行われます(製造と試験を参照)。
ROSA もこれと同様の構成です。ヘッダー上にフォトダイオードのダイを配置し、高インピーダンスのノードを短く保つために同じ缶の中にTIAを収めることが多く、キャップにはレンズが付き、APD 受信器の場合は高電圧バイアス用のピンが追加されます。
アイソレーター
コネクター、汚れた端面、光ファイバー自体など、さまざまな箇所からレーザーへ光が反射して戻ると、DFB レーザーや EML レーザーが不安定になります。ノイズ(RIN)が増加し、モードホッピングや波長ジッターを引き起こし、DDM の Tx 読み値がずれることもあります。光アイソレーター(2枚の偏光子の間にファラデー回転子を挟んだもの、アイソレーション 25–35 dB、損失 0.3–0.5 dB)は、伝送距離を問わずすべての 1310/1550 nm モジュールでレーザーと光ファイバーの間に配置されます。VCSEL ベースの SR モジュールでは通常これを省略します。マルチモードリンクは反射の影響を受けにくく、850 nm では 0.1 dB 単位の差が重要になるためです。低価格帯の PON ONU でもアイソレーターが省略されることがあり、これが反射性のある設備上での挙動がばらつく一因です(PON の問題を参照)。
光ファイバーインターフェース:レセプタクルとピグテール
| インターフェース | 構造 | 備考 |
|---|---|---|
| LC レセプタクル(SFP、SFP+、QSFP LR4/CWDM4 デュプレックス) | ジルコニア製のスプリットスリーブが、パッチコードのフェルールをモジュール内部の光ファイバースタブまたはレンズ付きポートと位置合わせする | 清掃する端面はスタブの端面。そこの損傷は修復不能 |
| SC レセプタクル(PON、GBIC、1G) | 同様の構造で 2.5 mm スリーブを使用。PON ではAPC(8度角、緑色)を使用 | APC ポートに UPC を挿すとデシベルを失い、OLT 側へ反射する(物理的な不一致を参照) |
| MPO/MT レセプタクル(SR4、DR4、PSM4、SR8) | レンズアレイが、ガイドピン付きの MT フェルールに 4/8/12 本のビームを結合する。シングルモードの DR4/DR8 では APC を使用 | 清潔さと同じくらい、極性とピン配列が重要 |
| ピグテール | OSA に恒久的に取り付けられた光ファイバーで、外部のコネクターで終端される | 産業用/レガシー。内部スタブなし |
| コネクターなし(AOC、DAC) | 光ファイバーリボンまたはツインアックスを接着 | ケーブル内部 |
コネクターファミリーと研磨コードについてはコネクターと光ファイバーを参照してください。
アライメント:コストがかかる工程
ダイと光ファイバーのアライメント公差は、シングルモードで約 ±1 µm です。メーカーはアクティブアライメントを用います。レーザーに通電した状態でロボットがレンズや光ファイバーを動かして結合パワーを最大化し、その後レーザー溶接や UV エポキシで固定する手法です。1個あたり数秒かかり、これがシングルモード TOSA のコストの下限を決めます。マルチモード(コア径 50 µm)は ±10 µm まで許容でき、パッシブアライメントが可能です。これが 850 nm の光学部品が安価である理由であり、COB やレンズアレイがまず 850 nm で実用化された理由でもあります(チップオンボードを参照)。
マルチチャネルパッケージング
- パラレル(SR4、DR4):1つのサブマウント上、または個別チップとして4個か8個のレーザーを配置し、レンズアレイ1個、MT フェルール1個で構成します。
- WDM(LR4、CWDM4、FR4):4個の TOSA(または1個の4チャネルアレイ)が内部マルチプレクサーに接続し、その先は単一光ファイバーのポートとなります。フィルターブロックはパッケージの一部です(モジュール内部の WDMを参照)。
- BOSA(BiDi、PON):レーザーとフォトダイオードが、45度 WDM フィルターを介して1つのポートを共有します。PON トリプレクサーでは3ポート構成になります。
パッケージングと信頼性
| 故障 | 原因 | 兆候 |
|---|---|---|
| 端面の劣化 | 湿気(気密性の喪失)、汚染 | バイアスが徐々に上昇し、パワーが低下する(Tx バイアスと経年劣化を参照) |
| 結合のドリフト | エポキシのクリープ、熱サイクル、機械的衝撃 | Tx パワーが緩やかに低下し、バイアスが上昇する(APC が補償する) |
| スタブ端面の損傷 | 不良なパッチコードフェルールによる傷、または汚れのすり込み | その側で恒久的に 1–3 dB の損失。清掃しても回復しない |
| アイソレーター/レンズの曇り | 非気密設計における汚染 | 波長依存の損失、RIN の上昇 |
| TO-can 溶接部のひび割れ | 熱衝撃、落下 | 突然の故障、または数か月かけての湿気侵入 |
CodingBox では
パッケージングそのものはメモリマップ上では見えませんが、その結果は見えます。結合損失はバイアスが正常なのに Tx パワーが低いという形で、端面の損傷はバイアスのトレンドとして、スタブの損傷は清掃しても直らない低い Rx として現れます。モジュールの生涯にわたる DDM のログと、ベンチでの検査スコープを組み合わせれば、どれに該当するかが分かります。